ハシビロコウは飛ぶ?飛ぶ姿・飛ぶ距離・あまり飛ばない理由
ハシビロコウは、ちゃんと飛べる鳥です。ただ、飛んでいるのは1日のうち1%ほど。だからこそ、飛ぶ姿は特別です。
あらすじ
この記事では、次の12項目を順に説明します。
- ハシビロコウは飛ぶ?
- ハシビロコウの飛ぶ姿はどんな形?
- ハシビロコウの飛び方を数字で見ると?
- ハシビロコウはサギやコウノトリと飛び方が違う?
- ハシビロコウが飛ぶ距離はどれくらい?
- ハシビロコウは渡り鳥?遠くまで飛ぶことはある?
ほか6項目は下の目次から。
目次
ハシビロコウは飛ぶ?
ハシビロコウは飛びます。翼を広げた長さ(翼開長)は230〜260cmあり、湿地の上をゆったり飛びます。
「動かない鳥」として知られていますが、飛ぶ力はしっかりあります。アフリカの水鳥を守る国際協定(AEWA)の保全計画では、「力強く飛ぶ鳥」と書かれています。
ミシガン大学の動物図鑑(Animal Diversity Web)にも、飛ぶ姿の説明があります。昼間に上昇気流に乗り、なわばりの上を舞う姿がよく見られるそうです。上昇気流は、地面で暖められてのぼっていく空気のことです。
上の写真は、ウガンダとコンゴ民主共和国の国境にあるアルバート湖で撮られた1枚です。翼を大きく広げて、飛び立つところです。
「動かない鳥」と呼ばれるけど、飛べないわけじゃないよ。翼を広げると、大人が両手を広げた長さよりずっと大きいんだ。
ハシビロコウの飛ぶ姿はどんな形?
ハシビロコウは、首を縮めて飛びます。大きな翼を平らに広げ、羽ばたきと滑空(=翼を広げたまま進むこと)をくり返します。
首を縮めて飛ぶのは、ペリカンやサギと同じです。コウノトリは首をまっすぐ前に伸ばして飛ぶので、飛ぶ姿で見分けられます。見分け方はハシビロコウとコウノトリ・サギの違いにまとめました。
数字を残しているのは、鳥類図鑑『Storks, Ibises and Spoonbills of the World』(Hancock ほか、1992年)です。この図鑑によると、ハシビロコウの羽ばたきは1分間に約150回。1秒に直すと約2.5回で、鳥の中でもとてもゆっくりな部類とされています。
同じ図鑑では、羽ばたきと滑空をそれぞれ約7秒ずつくり返すとされています。高く舞い上がるときは、翼を平らに保ったまま上昇気流に乗ります。
ハシビロコウの飛び方を数字で見ると?
ハシビロコウの飛び方を、資料の数字でまとめます。
| 項目 | ハシビロコウの数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 翼を広げた長さ(翼開長) | 230〜260cm | BirdLife International ほか |
| 体重 | 4〜7kg | BirdLife International ほか |
| 羽ばたきの回数 | 1分間に約150回 | Hancock ほか(1992) |
| 羽ばたきと滑空のくり返し | それぞれ約7秒 | Hancock ほか(1992) |
| 驚いて飛び立ったときの距離 | ふつう100〜500mまで | Hancock ほか(1992) |
| 飛んでいる時間 | 観察時間の約1% | Mullers & Amar(ザンビア) |
| ふだんの1日の移動(中央値) | 大人 約0.84km、若鳥 約0.73km | Acácio ほか(2021) |
ポイントはここです。ハシビロコウは長く飛べる力を持ちながら、実際にはほとんど飛ばない鳥です。ザンビアのバングウェウル湿地で、170時間あまり観察した研究があります。時間の85%はじっと立つ・羽づくろいなどに使い、歩くのが14%、飛ぶのは1%でした。
1%は、1時間に直すと約36秒です。野生で1時間見ていても、飛んでいるのはそのくらいということになります。
ハシビロコウはサギやコウノトリと飛び方が違う?
ハシビロコウは、コウノトリの仲間より翼が大きく、それでいて渡りをしません。
| 項目 | ハシビロコウ | コウノトリ | シュバシコウ(ヨーロッパのコウノトリ) |
|---|---|---|---|
| 翼開長 | 230〜260cm | 約200〜220cm | 約150〜165cm |
| 体重 | 4〜7kg | 4〜5kg | 約2.3〜4.4kg |
| 飛ぶときの首 | 縮める | 伸ばす | 伸ばす |
| 渡り | しない(季節で近くを移動) | 中国東北部などで繁殖し、中国南部で冬を越す | ヨーロッパで繁殖し、アフリカで冬を越す |
日本の国土交通省の資料では、コウノトリの翼開長は約200〜220cm、体重は4〜5kgです。ハシビロコウは、それよりひと回り大きい翼を持っています。
一方で、コウノトリやシュバシコウは何千kmも渡る鳥です。大きな翼を持つハシビロコウが、同じ湿地のまわりで一生を過ごすのは、おもしろい違いです。仲間の鳥のことはハシビロコウの仲間で紹介しています。
ハシビロコウが飛ぶ距離はどれくらい?
ハシビロコウのふだんの移動は短く、GPSの調査では8割の日が1日3km未満でした。驚いて飛び立ったときも、100〜500mほどで降りることが多いとされます。
ザンビアのバングウェウル湿地で、11羽にGPS(位置を記録する機械)をつけた研究があります。Acácio ほかが2021年に Scientific Reports 誌で発表しました。2011年12月から2018年10月まで、朝6時から夕方6時まで1時間ごとに位置を記録しています。
GPSをつけたのは、多くが巣立ち前のヒナでした。生まれて約84日のころに、背中に機械をつけています。重さはベルトこみで80g、体重の1.3〜1.6%ほどです。記録できた位置は、全部で11万9,321か所にのぼりました。
| 分かったこと | 大人 | 若鳥 |
|---|---|---|
| 1日のうち最も遠くまで動いた距離(中央値) | 約0.84km | 約0.73km |
| よく動く月(その月の平均) | 12月 約10.5km | 5月 約5.5km |
| あまり動かない月(その月の平均) | 8月 約1.1km | 9月 約1.9km |
| 1年の行動圏(よく使う範囲の平均) | 約1,514km² | 約1,547km² |
1日3km以上動いた日は、全体の2割に足りませんでした。それでも1年で見ると、行動圏は約1,500km²に広がります。1辺が約39kmの正方形と同じくらいの広さです。
追いかけた鳥はどれも、1年じゅうバングウェウル湿地にとどまりました。研究では、水の量の変化が移動のきっかけになっていると分かりました。大人は水が減ってきた場所から、若鳥は水が増えてきた場所から離れる傾向がありました。
ここからはコウくんの推測です。ふだんは1日1km足らずしか動かず、水の量が変わると移動していた。飛ぶのは、魚がとれる浅い場所が水位といっしょに動いたときだけなのかもしれないね。
ハシビロコウは渡り鳥?遠くまで飛ぶことはある?
ハシビロコウは渡り鳥ではありません。ただ、ふだんのすみかから遠く離れた場所で見つかった記録もあり、長い距離を飛ぶ力はあると考えられています。
AEWAの保全計画(2013年)は、決まった長距離の移動をしている証拠はないとしています。一方で、生息地の外で迷い鳥(=ふだんいない場所で見つかる鳥)が記録されています。計画は、これを遠くまで飛べる証拠として挙げています。
ウガンダの保全計画(2018年)の表では、ケニアのヤラ湿地に迷い鳥の記録があるとされています。中央アフリカ共和国には、ときどき現れる鳥として載っています。
南スーダンのスッド湿地の西側には、季節で北と南へ限られた移動をするという報告があります(Guillet、1978年)。獲物の魚がとれる場所が、季節で変わるためと説明されています。
同じ南スーダンには、もう1つ報告があります(Guillet、1984年)。同じ場所で餌をとる鳥どうしでも、巣は100kmほど離れていることがあるそうです。ふだんは近場で暮らしながら、必要なときは長い距離も飛べる鳥だと分かります。すんでいる国や湿地はハシビロコウの生息地にまとめました。
ハシビロコウは木にとまる?
ハシビロコウは、ときどき木にとまることがあります。ただ、ふだん休むのは、自分の背より低い草の中です。
ウガンダの保全計画(2018年)は、昔の図鑑の記録をもとに、こう説明しています。休む場所には、大人の背より低くて分け入りやすい草むらを選ぶ。ときには木にとまることもある。
日本のコウノトリは、木の枝をつかんで高い所にとまれる鳥です。国土交通省の資料によると、「松の上のツル」として描かれてきた鳥は、実はコウノトリだそうです。ハシビロコウも長い足の指を持ちますが、木の上より水辺の草の上で過ごすことが多い鳥です。足のつくりはハシビロコウの足で紹介しています。
ハシビロコウが飛ぶのはいつ?
野生のハシビロコウは、日中に上昇気流に乗って舞う姿が知られています。ウガンダのガイドは、暖かくなる朝の遅い時間に飛びまわると話しています。
これはアメリカの鳥の保護団体オーデュボン協会の記事で、ウガンダのマバンバ湿地を案内したガイドの話として紹介されています。飛ぶきっかけは、ほかにもいくつかあります。
- 狩り場を変えるとき(水の量が変わったときなど)
- 人や舟に驚いたとき(100〜500mほど飛んで降りる)
- 日中、上昇気流に乗って、なわばりの上を舞うとき
ここからはコウくんの推測です。体重が7kgにもなる鳥が、ずっと羽ばたき続けるのは大仕事なのかも。地面が暖まって上昇気流ができる時間を待って飛べば、少ない力で高く上がれるのかもしれないね。
ハシビロコウのヒナはいつ飛べる?
ハシビロコウのヒナは、生まれてから105〜112日ごろに、よく飛べるようになります。巣立ち(約95〜105日)から少しあとです。
巣立ってからも、1か月ほどは親から餌をもらいます。飛べるようになるまでの時期は、ヒナにとって危ない時期でもあります。
AEWAの保全計画によると、子育ての季節に湿地で起きる野火は、まだ飛べない若い鳥の命をうばうことがあります。飛べるかどうかは、生きのびることに直結します。ヒナの育ち方はハシビロコウの赤ちゃんとハシビロコウの子供で紹介しています。
動物園のハシビロコウは飛ばない?
動物園でも、ハシビロコウが飛ぶことはあります。ただ、いつ飛ぶかは決まっていないので、見られたら運がいい場面です。
各施設の公式の紹介では、次のような飛ぶ姿が書かれています(2026年10月時点)。
| 施設 | 公式の紹介 |
|---|---|
| 恩賜上野動物園(東京都) | まばたきや羽づくろいのほか、飛ぶこともある |
| 神戸どうぶつ王国(兵庫県) | 展示場の中をぐるりと飛ぶ姿が見られることがある |
| 那須どうぶつ王国(栃木県) | ボンゴが橋を使わずに、飛んで池を渡るようになった |
神戸どうぶつ王国の「Big bill」は、湿地を再現した展示場です。公式の紹介では、展示場と通路のあいだに柵のような視界をさえぎるものがありません。池を歩く、ぐるりと飛ぶ、巣の材料を運ぶ。そんな姿を近くで見られることがあるそうです。
一方で、動物園が翼をどう扱っているか(飛べる範囲をどうしているか)を書いた公式資料は、探した範囲では見つかりませんでした。施設によって、展示場の広さや屋根のつくりも違います。
羽を大きく広げる姿は、飛ばなくても見られることがあります。翼の羽のつくりはハシビロコウの羽で紹介しています。
ハシビロコウの飛ぶ姿を見るこつは?
ハシビロコウの飛ぶ姿を見るには、動きのある朝の時間をねらい、時間に余裕をもって待つことです。
那須どうぶつ王国の公式ブログでは、ボンゴは朝に扉が開くと外に出て、お気に入りの浅い巣へよく飛んでいくと紹介されています。動きの多い時間帯を知っておくと、チャンスが増えます。
野生で見たいなら、ウガンダのマバンバ湿地やマーチソン・フォールズ国立公園が知られています。舟から探すことが多いので、近づきすぎると驚いて飛び去ってしまいます。
飛ぶのは一瞬だから、カメラは連写にしておくといいよ。撮り方のこつは「写真の撮り方」の記事も見てね。
撮り方はハシビロコウの写真の撮り方、じっとしている理由はハシビロコウが動かない理由で紹介しています。出かける前に、各施設の公式情報を確認してください。
出典
- Animal Diversity Web(ミシガン大学):Balaeniceps rex
- Dodman(2013):ハシビロコウ国際単一種保全行動計画(AEWA Technical Series No.51)
- Acácio ほか(2021):Changes in surface water drive the movements of Shoebills(Scientific Reports)
- Hancock, Kushlan & Kahl(1992)『Storks, Ibises and Spoonbills of the World』の値(英語版ウィキペディアの引用で確認)
- Loftie-Eaton(2016):Biodiversity Observations 7.58(Mullers & Amar の時間の使い方を引用)
- Mirembe ほか(2018):ウガンダのハシビロコウの保全計画(EDGE of Existence)
- 国土交通省 関東地方整備局:コウノトリはどんな鳥?
- Audubon:Day 241: The Shoebill(2015年)
- 恩賜上野動物園:動物図鑑 ハシビロコウ
- 神戸どうぶつ王国:ハシビロコウ生態園 Big bill
- 那須どうぶつ王国 公式note(2026年4月1日)
- BirdLife International:Shoebill の種の解説



