ハシビロコウとは?何科の、どんな鳥?大きさ・すみか・食べものの基本
ハシビロコウとは、アフリカ中東部の湿地にすむ、靴のような大きなくちばしの鳥です。じっと動かずに獲物を待つ姿で、世界中にファンがいます。
あらすじ
この記事では、次の12項目を順に説明します。
- ハシビロコウとは、どんな鳥?
- ハシビロコウは何科の鳥?
- ハシビロコウの名前には、どんな意味がある?
- ハシビロコウの大きさは、ほかの鳥と比べてどれくらい?
- ハシビロコウの見た目の特徴は?
- ハシビロコウはどこにすんでいる?
ほか6項目は下の目次から。
目次
ハシビロコウとは、どんな鳥?
ハシビロコウとは、アフリカ中東部の湿地だけにすむ大型の鳥です。靴のような大きなくちばしと、じっと動かない狩りで知られています。
一般に、鳥の名前や仲間分けは、見た目から決められてきました。ハシビロコウも、昔は姿が似ていることからコウノトリの仲間とされていました。いまは、その考えが変わっています。
まずは、ハシビロコウの基本の数字を表にまとめました。
| 項目 | ハシビロコウ |
|---|---|
| 学名 | Balaeniceps rex(クジラの頭をした王) |
| 分類 | ペリカン目 ハシビロコウ科 ハシビロコウ属 |
| 立った高さ(体高) | 110〜140cm(最大152cm) |
| 翼を広げた長さ | 230〜260cm |
| 体重 | 4〜7kg(平均でオス約5.6kg・メス約4.9kg) |
| くちばしの長さ | 18.8〜24cm |
| すみか | アフリカ中東部の湿地 |
| 好物 | 肺魚(ハイギョ) |
| 寿命 | 飼育下の最長記録は35.7年 |
| 大人の数 | 世界で3,300〜5,300羽(推定) |
| 絶滅危惧のランク | 危急種(VU) |
ハシビロコウは何科の鳥?
ハシビロコウは、ペリカン目ハシビロコウ科の鳥です。ハシビロコウ科には、ハシビロコウ1種しかいません。
科の下の属も1つで、その中の種も1つです。亜種(あしゅ=同じ種の中の地域ごとのちがい)もありません。このような鳥を「1科1属1種」と呼びます。
名前に「コウ(コウノトリ)」がつきますが、コウノトリの仲間ではありません。DNAの研究では、ペリカンやシュモクドリに近い仲間だと分かっています。3つのうちどれがいちばん近いかは、研究で答えが分かれています。
百科事典の書き方も、時代とともに変わりました。古い百科事典ではコウノトリ目、新しい図鑑ではペリカン目とされています。くわしくはハシビロコウは何の仲間?とハシビロコウとコウノトリの違いで紹介しています。
ハシビロコウ科の化石も見つかっています。エジプトの約3,400万〜2,800万年前の地層から出た、ゴリアティアという鳥です。「恐竜みたい」といわれる話はハシビロコウは恐竜?にまとめました。
ハシビロコウの名前には、どんな意味がある?
ハシビロコウの日本語の名前は「くちばしの広いコウノトリ」という意味です。学名は「クジラの頭をした王」、英語名は「靴のくちばし」です。
同じ鳥でも、言葉によってたとえるものが違います。名前の話は、テーマごとに記事を分けています。
- 日本語の名前「嘴広鸛」の意味:ハシビロコウの名前の由来
- 学名 Balaeniceps rex の意味:ハシビロコウの学名
- 英語名 Shoebill の意味と読み方:ハシビロコウの英語名
- 世界の言葉での呼び名:ハシビロコウの外国語名
学名は1850年に、イギリスの鳥類学者ジョン・グールドがつけました。ヨーロッパに知られるまでの歴史はハシビロコウはいつ発見された?で紹介しています。
ハシビロコウの大きさは、ほかの鳥と比べてどれくらい?
ハシビロコウは、立った高さが110〜140cmある大きな鳥です。日本のコウノトリと同じくらいか少し大きく、翼を広げると2m半前後になります。
湿地にすむほかの大きな鳥と、数字で並べてみました。
| 鳥 | 高さ・長さ | 翼を広げた長さ |
|---|---|---|
| ハシビロコウ | 体高110〜140cm | 230〜260cm |
| コウノトリ | 全長112cm | 200cm |
| アオサギ | 全長84〜102cm | 155〜175cm |
| モモイロペリカン | 全長137〜168cm | 274〜335cm |
体高は立ったときの高さです。全長は、くちばしの先から尾の先までの長さです。測り方が違うので、目安として見てください。
体重は、ハシビロコウが4〜7kgです。モモイロペリカンは9〜12kgほどあり、ハシビロコウより重い鳥です。
人と比べると、ハシビロコウの高さは大人の胸から肩くらいです。数字のくわしい話はハシビロコウの大きさで、くちばしはハシビロコウのくちばしで紹介しています。
ハシビロコウの見た目の特徴は?
いちばんの特徴は、幅も高さもあるがっしりしたくちばしです。先はかぎのように曲がっていて、ぬるぬるした魚もしっかりつかめます。
体は灰色がかった青い羽でおおわれています。頭のうしろには、短い冠羽(かんう=頭のうしろの飾り羽)があります。
目は顔の前のほうを向いています。そのため正面から見ると、「にらまれている」ような迫力があります。目の色や目つきはハシビロコウの目、羽の色はハシビロコウの羽で紹介しています。
オスはメスより大きく、くちばしも長い傾向があります。ただ、見た目だけで見分けるのは難しい鳥です。見分け方はハシビロコウのオスとメス、若い鳥の姿はハシビロコウの子供にまとめました。
ハシビロコウはどこにすんでいる?
ハシビロコウは、アフリカ中東部の湿地にすんでいます。野生のハシビロコウは、アフリカにしかいません。
国際自然保護連合(IUCN)の資料では、一年中くらしている国は次の8か国です。
- 南スーダン・スーダン
- ウガンダ・タンザニア
- ザンビア・コンゴ民主共和国
- ルワンダ・中央アフリカ共和国
いちばん多いのは南スーダンです。2002年の調査では、南スーダンだけで約5,000羽と推定されました。広大なスッド湿地が、大きなすみかになっています。
旅行で野生の姿を見に行ける場所もあります。ウガンダのマバンバ湿地やマーチソン・フォールズ、ザンビアのバングウェウル湿地が知られています。すみかの様子はハシビロコウの生息地とパピルスの湿地で紹介しています。
ハシビロコウは、どんな暮らしをしている?
ハシビロコウは、湿地でじっと獲物を待ち、魚をとって暮らしています。ふだんは1羽で過ごし、あまり飛び回りません。
ハシビロコウは何を食べる?
ハシビロコウの好物は、肺魚(ハイギョ)という魚です。ナマズ、ティラピア、カエル、水へびなども食べます。
食べるものは、すんでいる湿地で変わります。ザンビアのバングウェウル湿地の調査では、捕まえた獲物の71%がナマズの仲間でした。
捕まえた魚は、丸のみにします。食べもの全体はハシビロコウの餌、好物の魚は肺魚とは、狩りの方法はハシビロコウの狩りで紹介しています。
ハシビロコウが動かないのはなぜ?
ハシビロコウが動かないのは、獲物の魚に気づかれないためです。動かずに待つことが、そのまま狩りの方法になっています。
ザンビアの湿地で170時間あまり観察した研究があります。ハシビロコウは、時間の85%を、じっと立つ・羽づくろいなど体力をほとんど使わない行動に使っていました。獲物が捕れたのは、平均で約8時間に1匹でした。
ここからはコウくんの推測です。ぼくらは時間の85%を、体力をほとんど使わない行動にあてているんだ。獲物は8時間に1匹くらいしか捕れない。だから、使うエネルギーをうんと少なくして、たまの食事で足りる体になっているのかもしれないね。
くわしくはハシビロコウが動かない理由へ。眠り方はハシビロコウの寝方、暑い日の工夫はハシビロコウの暑さ対策で紹介しています。
ハシビロコウは鳴く?飛ぶ?
ハシビロコウは、のどで鳴くことは少ない鳥です。そのかわり、くちばしを打ち鳴らす「クラッタリング」でカタカタと音を出します。
クラッタリングは、つがいの相手へのあいさつなどで見られます。動物園では、頭を下げる「お辞儀」といっしょに見られることもあります。音の話はハシビロコウの鳴き声、お辞儀はハシビロコウのお辞儀へ。
ハシビロコウは、ちゃんと飛べる鳥です。渡り鳥ではないので、同じ湿地のまわりで暮らし、必要なときだけ飛びます。飛ぶ姿はハシビロコウは飛ぶ?で紹介しています。
ハシビロコウの子育てと寿命は?
ハシビロコウの卵はふつう2個ですが、大人まで育つのはふつう1羽です。寿命は長く、飼育下で35.7年の記録があります。
子育ての流れは、次のとおりです。
- 卵の数:1〜3個(ふつう2個)
- 温める期間:約30〜35日(オスとメスが交替で)
- 巣立ち:生まれてから約95〜105日
- 独り立ち:生まれてから約125日
- 子どもを作れるようになる年齢:3〜4歳
暑い日には、親がくちばしで水を運び、卵やヒナにかけて冷やします。ヒナの育ち方はハシビロコウの赤ちゃん、卵はハシビロコウの卵、巣はハシビロコウの巣で紹介しています。1羽しか育たない理由はハシビロコウの兄弟へ。
日本でも、長生きした記録があります。静岡県の伊豆シャボテン動物公園の「ビル」は、1971年に来日し、2020年に亡くなりました。推定の年齢は50歳以上です。寿命の話はハシビロコウの寿命にまとめました。
ここからはコウくんの推測です。ぼくらは1回の子育てで、ふつう1羽しか育てられない。そのかわり、30年をこえて生きることもある。長く生きて何度も子育てをすることで、仲間の数を保ってきたのかもしれないね。
ハシビロコウは絶滅危惧種?
ハシビロコウは、IUCNのレッドリストで危急種(VU)の絶滅危惧種です。大人は世界で3,300〜5,300羽と推定され、減りつづけています。
減っている主な理由は、次のとおりです。
- すみかの湿地が、農地や放牧地に変わる
- 取引のために、巣からヒナや卵が持ち去られる
- 火事や、巣の近くへの人の立ち入り
親が子を残す平均の年齢(世代の長さ)は12.2年と推定されています。一度数が減ると、もとに戻るまでに長い時間がかかる鳥です。国際的な取引は、ワシントン条約の附属書II(取引に許可が必要)で規制されています。
くわしくはハシビロコウは絶滅危惧種へ。守る活動はハシビロコウの保護、ヒナの持ち去りはハシビロコウの密輸で紹介しています。ペットにできるかはハシビロコウはペットで飼える?へ。
ハシビロコウにはどこで会える?
野生のハシビロコウに会えるのは、アフリカだけです。動物園で会えるのは、世界で20施設ほどです。
飼育下で初めてヒナがかえったのは、2008年のベルギーのパイリ・ダイザです。くわしくはパイリ・ダイザのハシビロコウへ。ヨーロッパ・アメリカ・アジアの施設は世界でハシビロコウに会える場所にまとめました。
日本では、2026年10月時点で8施設・15羽が暮らしています。
- 恩賜上野動物園(東京都)
- 那須どうぶつ王国(栃木県)
- 千葉市動物公園(千葉県・2028年春ごろまで展示休止)
- 掛川花鳥園(静岡県)
- 神戸どうぶつ王国(兵庫県)
- 松江フォーゲルパーク(島根県)
- 高知県立のいち動物公園(高知県)
- めっちゃおもろい動物園(滋賀県甲賀市)
展示の予定は変わることがあります。出かける前に、各施設の公式情報を確認してください。施設ごとの案内はハシビロコウに会える動物園、1羽ずつの名前は日本のハシビロコウの名前で紹介しています。
ハシビロコウをもっと知るには、どこから読む?
気になるテーマから読むのがおすすめです。このサイトの記事を、テーマ別に並べました。
| 知りたいこと | 記事 |
|---|---|
| 体のつくり | 大きさ・くちばし・目・羽・足 |
| 毎日の暮らし | 動かない理由・狩り・餌・寝方・天敵 |
| 子育て | 赤ちゃん・卵・巣・若い鳥・飼育下の繁殖 |
| 名前と歴史 | 名前の由来・英語名・学名・発見の歴史 |
| 守る | 絶滅危惧種・保護・密輸 |
| 会いに行く | 日本の動物園・世界の会える場所・アフリカの野生 |
| 楽しむ | 人気の理由・写真の撮り方・クイズ・よくある質問 |
はじめての人は、まず「動かない理由」から読んでみてね。動物園で見るときの楽しみ方が、ぐっと変わるよ。
生態と体のひみつハシビロコウが動かない理由は?何時間も動かないのは本当?ハシビロコウが動かない理由は、獲物の魚に気づかれずに待つためです。野生では時間の85%を立つ・羽づくろい・座ることに使い、歩くのは14%でした。何時間動かないのか、動くのはどんなときかも紹介します。
生態と体のひみつハシビロコウの大きさは?身長・翼・体重を人やほかの鳥と比べるハシビロコウの大きさは、立った高さ110〜140cm、翼を広げると230〜260cm、体重4〜7kg。小学生の平均身長やペリカン・サギとの比較、オスとメスの差、世界の動物園の個体の記録、ヒナの育ち方まで紹介します。
日本で会うハシビロコウに会える動物園はどこ?日本の8施設まとめハシビロコウに会える日本の動物園を、関東・東海・関西・中国・四国の地域別にまとめました。上野動物園、那須どうぶつ王国、掛川花鳥園、神戸どうぶつ王国、滋賀のめっちゃおもろい動物園、松江フォーゲルパーク、のいち動物公園など。2026年10月時点。出典
- BirdLife International:Shoebill の種の解説
- IUCN レッドリスト:Balaeniceps rex
- Animal Diversity Web(ミシガン大学):Balaeniceps rex
- AnAge:Balaeniceps rex
- Mullers & Amar:ザンビア・バングウェウル湿地での採食行動の研究(Ostrich 誌)
- Mullers & Amar(2015):巣での親の行動とヒナの成長の研究(Waterbirds 誌)
- Smith & Ksepka(2015):ハシビロコウ科の化石ゴリアティアの研究(Palaeontologia Electronica)
- コトバンク:ハシビロコウ(世界大百科事典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典ほか)
- 京都府レッドデータブック2015:コウノトリ
- Animal Diversity Web:アオサギ(Ardea cinerea)
- Animal Diversity Web:モモイロペリカン(Pelecanus onocrotalus)
- パイリ・ダイザ:ハシビロコウ
- Mirembe ほか(2018):ハシビロコウの保全の計画書(EDGE of Existence)
- 伊豆シャボテン動物公園:ハシビロコウ「ビル」についての資料(PDF)

