ハシビロコウの寿命は何年?平均・最長の記録と長生きの理由
ハシビロコウの寿命は、鳥の中でも長い部類です。記録に残る最長は35.7年で、日本には推定50歳以上まで生きた例もあります。
あらすじ
この記事では、次の11項目を順に説明します。
- ハシビロコウの寿命は何年?
- ハシビロコウの平均寿命が分からないのはなぜ?
- ハシビロコウの寿命の最長記録は?
- ハシビロコウの寿命をほかの大きな鳥と比べると?
- ハシビロコウは何歳で大人になる?
- 野生のハシビロコウの命をおびやかすものは?
ほか5項目は下の目次から。
目次
ハシビロコウの寿命は何年?
ハシビロコウの寿命は、飼育下で35年以上の記録があり、推定50歳以上まで生きた例もあります。野生での平均寿命は、まだはっきり分かっていません。
寿命の数字は、資料によってかなり違います。主な資料の書き方を並べると、次のとおりです。
| 資料 | ハシビロコウの寿命の書き方 |
|---|---|
| AnAge(動物の寿命を集めたデータベース) | 飼育下の最長 35.7年(1羽の記録) |
| AEWA 保全計画(2013年) | 飼育下で25年をこえた例が複数、少なくとも35年生きた例が1羽。野生の平均は分からない |
| マンダイ・バード・パラダイス(シンガポール) | 野生で平均30年、人のもとで最大50年 |
| ZooTampa(アメリカ) | 約35年 |
| 伊豆シャボテン動物公園(日本) | 「ビル」が推定50歳以上で死亡(2020年) |
AEWAは、アフリカとユーラシアの水鳥を守る国際協定です。ポイントはここです。確かな記録として残る最長は35.7年、推定をふくめると50歳以上。どちらを「最長」と呼ぶかで、数字が変わります。
ハシビロコウの平均寿命が分からないのはなぜ?
野生の1羽を、生まれてから死ぬまで何十年も追いかけた記録がないからです。
野生の鳥の寿命は、ふつう足環(あしわ=足につける番号つきの輪)をつけて、何年後に見つかるかで調べます。ハシビロコウで、足環などから年齢が分かった野生の個体の記録は、探した範囲では見つかりませんでした。
ハシビロコウを長く追いかけた研究に、ザンビアのGPS調査があります(Acácio ほか、2021年)。それでも追いかけた期間は2011年12月から2018年10月まで、約7年です。追いかけた子供の鳥のうち4羽は、若鳥になる前に死んだか、行方が分からなくなりました。
ハシビロコウは、見た目で年齢を見分けにくい鳥でもあります。伊豆シャボテン公園の発表によると、オスのほうが平均して大きいこと以外に、外見のオスとメスの違いはありません。
野生の数が少なく、広い湿地に散らばって暮らしていることも、調査を難しくしています。大人の鳥は世界で3,300〜5,300羽ほどと推定されています(IUCN)。南スーダンのスッド湿地では、1km²あたり0.05羽という推定もあります(AEWA)。20km²に1羽ほどの計算です。
ハシビロコウの寿命の最長記録は?
資料に残る最長は、AnAgeの35.7年です。日本の「ビル」は、推定で50歳以上まで生きました。
AnAgeの35.7年は、1938年に発表された動物の寿命の論文(Flower)にもとづく記録です。90年近く前の記録が、いまも最長として使われていることになります。
伊豆シャボテン動物公園(静岡県)の発表によると、「ビル」の一生は次のとおりです。
- 1971年:スーダンのハルツーム動物園から日本へ
- 1971〜1981年:進化生物学研究所で10年間暮らす
- 1981年4月:メスの「シュー」とつがいのオスとして、伊豆シャボテン公園へ
- 2020年8月6日:老衰で死亡。推定50歳以上
- 2020年8月:解剖の結果、メスだったと分かる
- 2021年4月28日:来園40周年の日から、剥製(はくせい)として展示
ビルは日本に来てから約49年を過ごしました。ただし年齢は推定なので、AnAgeの記録には入っていません。韓国の水族館にいる「ビル」は、別の鳥です。
ここからはコウくんの推測です。伊豆の園は、年をとったビルに負担をかけないよう、捕まえての検査をしなかったそうです。人との信頼を大事にした、静かな暮らしも長生きを支えたのかもしれないね。
ハシビロコウの寿命をほかの大きな鳥と比べると?
ハシビロコウの最長記録は、サギやコウノトリの仲間と同じくらいです。大きなペリカンには、50年をこえた記録があります。
同じAnAgeで、ほかの大型の水辺の鳥の最長記録を比べました。
| 鳥 | 最長記録 | どこでの記録か |
|---|---|---|
| ハシビロコウ | 35.7年 | 飼育下 |
| シュバシコウ(ヨーロッパのコウノトリ) | 39年 | 野生 |
| アオサギ | 37.5年 | 野生 |
| モモイロペリカン | 51年 | 飼育下 |
野生と飼育下の記録がまざっているので、単純には比べられません。AnAgeは、シュバシコウとアオサギの記録の数を「中くらい」、ハシビロコウを「少ない」としています。
人と比べるなら、伊豆シャボテン動物公園は、50歳をこえたビルを「人間なら100歳以上」と説明しています。
ハシビロコウは何歳で大人になる?
ハシビロコウは、3〜4歳ごろに大人になり、子どもを作れるようになります。
AnAgeでは、メスが大人になるのは1,090日(約3年)とされています。ウガンダの保全計画(2018年)も、BirdLife International をもとに3〜4歳としています。
一生の目安を、資料の数字で並べました。
| 時期 | 目安 |
|---|---|
| 卵を温める期間 | 約30〜35日 |
| 巣立ち | ふ化から約95〜105日 |
| よく飛べるようになる | ふ化から105〜112日ごろ |
| 独り立ち | ふ化から約125日 |
| 大人になる | 3〜4歳 |
| 世代の長さ(親が子を残す平均の年齢) | 12.2年 |
| 記録に残る最長の寿命 | 35.7年(飼育下) |
卵は1〜3個産まれますが、育つのはふつう1羽です。1年に1回の子育てで、多くても1羽ずつ。数が減ると、もとに戻るまで長い時間がかかる鳥です。子供の時期はハシビロコウの子供で紹介しています。
野生のハシビロコウの命をおびやかすものは?
大人になれば天敵は少ない一方で、卵やヒナのうちに命を落とすことが多い鳥です。
Animal Diversity Web(ミシガン大学)によると、大人のハシビロコウをおそう動物は少ないそうです。ねらわれるのは、巣にいる卵やヒナです。ザンビアのバングウェウル湿地では、次のような記録があります。
- 2011年:見守った10の巣のうち、ヒナが巣立ったのは約20%。主な原因は、人によるヒナの持ち去り
- 2012〜2013年:保護した巣では、1巣あたり0.89羽が巣立った
- 別の年の11の巣:9巣で巣立ち。1巣はヘビかオオトカゲとみられる動物におそわれ、1巣は火事で失われた
AEWAの保全計画は、死ぬ鳥を増やす原因として、野火、違法な取引、狩り、漁師による殺害を挙げています。計画をつくる会議では、長い目で見て最も大きな脅威は、野火と取引だとされました。
ウガンダでも同じ課題があります。マバンバ湿地は、ラムサール条約(=大切な湿地を守る国際条約)に登録された湿地です。その登録資料には、課題としてハシビロコウの密猟と、売るための若鳥の持ち去りが書かれています。保護の取り組みはハシビロコウは絶滅危惧種とハシビロコウの天敵で紹介しています。
ここからはコウくんの推測です。大人には天敵が少なく、危険はヒナの時期に集中している。だから、大人まで育ちさえすれば、野生でも長く生きられるのかもしれないね。
ハシビロコウが長生きなのはなぜ?
ハシビロコウが長生きする理由をはっきり調べた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。ただ、暮らし方には体力をあまり使わない特徴があります。
ザンビアの観察では、ハシビロコウは時間の85%を、じっと立つ・羽づくろいなど体力をあまり使わない行動に使っていました。獲物を捕まえるのは、平均で約8.3時間に1匹です。
飛んでいる時間は、観察時間の1%ほどでした。動かない理由はハシビロコウが動かない理由で紹介しています。
子育ても、ゆっくりです。1年に1回の子育てで、育つヒナはふつう1羽。親が子を残す平均の年齢(世代の長さ)は12.2年です。少ない子どもに、長い時間をかける鳥だといえます。卵からの育ち方はハシビロコウの卵にまとめました。
ここからはコウくんの推測です。1日の85%をじっと過ごすので、使うエネルギーは少なくて済むのかも。のんびりした暮らしと長い一生は、どこかでつながっているのかもしれないね。
ハシビロコウの年齢は見た目で分かる?
見た目だけで正確な年齢を知るのは難しいです。手がかりになるのは、目の色と羽の色です。
神戸どうぶつ王国によると、ハシビロコウの瞳のまわりは、若いときは黄色で、成長するにつれて青色に変わります。2025年に来た2羽は、虹彩(こうさい=瞳のまわりの色のついた部分)がまだ黄色で、若い個体だと分かると紹介されています。
Animal Diversity Web によると、巣立ったあとの若鳥は、大人より少し濃い灰色をしています。ただ、大人になってからの年齢を、見た目で読みとる方法は知られていません。
| 手がかり | 若いとき | 大人 |
|---|---|---|
| 瞳のまわりの色 | 黄色 | 青色に変わっていく |
| 羽の色 | 大人より少し濃い灰色 | 青みのある灰色 |
| 繁殖 | しない | 3〜4歳ごろから |
動物園の紹介でも、生まれた日はあまり書かれていません。高知県立のいち動物公園は、ささとカシシの生年月日を「不明」としています。千葉市動物公園や神戸どうぶつ王国の資料にも、来園の日はあっても生まれた日はありません。目の話はハシビロコウの目で紹介しています。
日本と世界で長く暮らすハシビロコウは?
日本では、千葉市動物公園のしずかが1989年から暮らしています。年齢は公表されていませんが、来園から37年になります(2026年時点)。
公式の資料で来園の年や生まれた年が分かる個体を並べました。
| 名前 | 施設 | 公式の資料で分かること |
|---|---|---|
| しずか(メス) | 千葉市動物公園(千葉県) | 1989年10月19日に来園 |
| じっと(オス) | 千葉市動物公園(千葉県) | 2005年7月22日に来園 |
| マリンバ(メス) | 神戸どうぶつ王国(兵庫県) | 2015年11月25日に来園 |
| ふたば(メス) | 掛川花鳥園(静岡県) | 2016年に来園。2026年で10周年 |
| ゼイン | マンダイ・バード・パラダイス(シンガポール) | 2006年1月1日生まれ |
| ビル(2020年に死亡) | 伊豆シャボテン動物公園(静岡県) | 1971年に来日。推定50歳以上 |
千葉市動物公園のハシビロコウは、2028年春ごろまで展示を休んでいます。展示は変わることがあるので、出かける前に公式情報を確認してください。千葉の2羽は千葉市動物公園のハシビロコウで紹介しています。
シンガポールのジュロン・バードパークは、1995年にハシビロコウの展示を始めました。いまのマンダイ・バード・パラダイスの前身です。最後の1羽は2015年に死に、2018年にカタールから新しいペアが来ています。来たときの年齢は、オスが11歳、メスが17歳でした。
世界の動物園にいるハシビロコウは、多くありません。AEWAの保全計画によると、2012年末に世界動物園水族館協会(WAZA)に入る16の園で40羽でした。
動物園のハシビロコウは野生より長生き?
比べられるほどの野生の記録がないので、はっきりとは言えません。シンガポールの園は、野生で平均30年、人のもとで最大50年と紹介しています。
動物園では、餌が毎日もらえ、野火や違法な持ち去りの心配もありません。一方で、ハシビロコウの飼育下での繁殖は、世界でもわずかしか成功していません。日本では2026年10月時点で、まだ例がありません。
いま日本にいるハシビロコウは、どれも海外から来た鳥です。1羽1羽に長く元気でいてもらうことが、動物園にとって大切な仕事になっています。繁殖の取り組みはハシビロコウの繁殖、日本の個体は日本のハシビロコウの名前で紹介しています。
出典
- AnAge:Balaeniceps rex
- AnAge:Ciconia ciconia(シュバシコウ)
- AnAge:Ardea cinerea(アオサギ)
- AnAge:Pelecanus onocrotalus(モモイロペリカン)
- Dodman(2013):ハシビロコウ国際単一種保全行動計画(AEWA Technical Series No.51)
- マンダイ・バード・パラダイス(シンガポール):Shoebill
- マンダイ:Stars of Mandai「Zane」
- ZooTampa:Shoebill Stork
- 伊豆シャボテン公園:報道発表「ビル」はメスだった(2020年8月28日)
- 伊豆シャボテン公園:報道発表「ビル」来園40周年(2021年4月26日)
- Acácio ほか(2021):Changes in surface water drive the movements of Shoebills(Scientific Reports)
- Mullers & Amar(2015):巣での親の行動とヒナの成長の研究(Waterbirds 誌)
- Mullers & Reid(2014):Ornithological Observations 5
- ラムサール条約:マバンバ湾湿地の登録資料(NatureUganda、2005年)
- Mullers & Amar:ザンビア・バングウェウル湿地での採食行動の研究(Ostrich 誌)
- Mirembe ほか(2018):ウガンダのハシビロコウの保全計画(EDGE of Existence)
- Animal Diversity Web(ミシガン大学):Balaeniceps rex
- IUCN レッドリスト:Balaeniceps rex
- 千葉市動物公園:ハシビロコウの展示休止について(報道資料・2026年)
- 神戸どうぶつ王国:新しいハシビロコウの紹介
- 高知県立のいち動物公園:ハシビロコウ
- マンダイ:ジュロン・バードパークにハシビロコウが戻る(2018年7月)
- BirdLife International:Shoebill の種の解説


