ハシビロコウの鳴き声は?クラッタリングの意味と音の正体
ハシビロコウの鳴き声として知られるのは、くちばしを打ち鳴らす「カタカタカタ」という音です。ふだんは、ほとんど声を出さない鳥です。
あらすじ
この記事では、次の11項目を順に説明します。
- ハシビロコウの鳴き声はどんな音?
- クラッタリングはどうやって鳴らす?
- ハシビロコウはどんな音や声を出す?
- ハシビロコウの鳴き声が「銃声」「マシンガン」といわれるのはなぜ?
- クラッタリングの意味は?
- ハシビロコウはなぜふだん鳴かない?
ほか5項目は下の目次から。
目次
ハシビロコウの鳴き声はどんな音?
ハシビロコウの鳴き声でいちばん有名なのは、くちばしを打ち鳴らす「クラッタリング」です。のどから出す声ではなく、くちばしで出す音です。
鳥の多くは、のどの奥にある鳴管(めいかん=鳥が声を出す器官)で鳴きます。ハシビロコウは、その声をほとんど使いません。
ミシガン大学の動物図鑑(Animal Diversity Web)は、ハシビロコウを「ふだんは静かな鳥」と紹介しています。そのかわりに、くちばしを打ち鳴らす行動をよく見せます。
文字で書くと「カタカタカタ…」「カカカカ…」といった音です。英語では bill-clattering(くちばしを打ち鳴らすこと)と呼ばれます。シンガポールのマンダイ・バード・パラダイスは、この音を「大きく、うつろに響くガラガラという音」と紹介しています。
英語のほかの声の呼び方は、アメリカのズータンパ(ZooTampa)の紹介が分かりやすいです。大人の牛のような声は mooing、ヒナの声は hiccupping(しゃっくり)と書かれています。
クラッタリングはどうやって鳴らす?
上と下のくちばしを、すばやく何度も打ち合わせて鳴らします。くちばしは長さ18.8〜24cmと大きくて硬いので、音がよく響きます。
神戸どうぶつ王国も、くちばしを打ち合わせて音を出す行動を「クラッタリング」と紹介しています。
ハシビロコウのくちばしは、幅と高さのあるがっしりした形です。打ち合わせる面が大きいぶん、小さな鳥のくちばしの音とは迫力がまったく違います。くちばしのつくりはハシビロコウのくちばしで紹介しています。
クラッタリングは、首を下げるお辞儀といっしょに見られることがよくあります。お辞儀の意味はハシビロコウのお辞儀にまとめました。
音の大きさ(デシベル)や、1回で何回くちばしを打ち合わせるかを測った研究は、探した範囲では見つかりませんでした。
ハシビロコウはどんな音や声を出す?
ハシビロコウの音は、クラッタリングのほかに、のどから出す声がいくつか知られています。どれも、ふだんはめったに聞けません。
| 音・声 | どんな音か | 出すのは | 出典 |
|---|---|---|---|
| クラッタリング | くちばしを打ち鳴らすカタカタ音 | 大人・若鳥・ヒナ | Animal Diversity Web |
| 牛のような声 | 低い「モー」に似た声 | 大人 | Hancock ほか(1992)、Animal Diversity Web |
| 高い声 | 細く高い、すすり泣くような声 | 大人 | Hancock ほか(1992)、Animal Diversity Web |
| しわがれた声 | かすれた、しゃがれた声 | 大人 | Hancock ほか(1992) |
| しゃっくりのような声 | 人のしゃっくりによく似た声 | ヒナ(餌をねだるとき) | Hancock ほか(1992)、Animal Diversity Web |
ポイントはここです。ハシビロコウの「鳴き声」の主役は、声ではなくくちばしの音です。のどからの声は、聞けたらかなり運がいいものです。
ハシビロコウの鳴き声が「銃声」「マシンガン」といわれるのはなぜ?
クラッタリングの、速く続く大きな打撃音が、銃の連射のように聞こえるからです。
硬いくちばし同士が、短い間かくで何度もぶつかります。その「タタタタ」と続くリズムが、機関銃の音にたとえられます。インターネットで「銃撃戦みたい」「怖い」といわれるのも、この音のことです。
ただ、クラッタリングは攻撃の合図ではなく、多くはあいさつの音です。見た目と音の迫力に比べて、中身はとても穏やかな行動です。
怖い音に聞こえても、たいていは「やあ」というあいさつだよ。わたしたちは、うるさく鳴き続ける鳥じゃないんだ。
クラッタリングの意味は?
クラッタリングの多くは、巣で会ったつがいや親子どうしのあいさつです。求愛のときにも見られます。
Animal Diversity Web によると、大人のハシビロコウは巣で会ったときにクラッタリングであいさつをします。ヒナや若鳥もクラッタリングをします。
アメリカのズータンパ(ZooTampa)も、つがいのあいさつとしてクラッタリングを紹介しています。高知県立のいち動物公園の解説シートでは、クラッタリングとあわせて頭を下げる動きに、親愛の意味があるとしています。繁殖の時期には、オスとメスでお辞儀をし合うそうです。
動物園では、好きな飼育員さんに向けてクラッタリングをする姿も知られています。掛川花鳥園のふたばのように、お辞儀とあわせて見せる個体もいます。
ハシビロコウはなぜふだん鳴かない?
ふだん鳴かない理由を調べた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。分かっているのは、1羽で静かに魚を待つ暮らしだということです。
アフリカの水鳥を守る国際協定(AEWA)の保全計画を見てみます。ハシビロコウは、子育ての時期をのぞいて、ほとんど1羽で暮らすとされています。Animal Diversity Web は、狩りでたよりにしている感覚は主に目と耳だとしています。
獲物の肺魚は、息つぎのために水面へ出てきます。魚の情報をまとめた FishBase によると、ハシビロコウがよく食べる種類の肺魚は、空気を吸わないと生きられない魚です。ハシビロコウは、その息つぎの一瞬をじっと待ちます。狩りの話はハシビロコウの狩りで紹介しています。
ここからはコウくんの推測です。狩りは目と耳がたよりなので、自分が音を立てないほうが、魚の気配に気づきやすいのかもしれない。いつも1羽で暮らすから、遠くの仲間を呼ぶ声もあまりいらないのかもね。
ハシビロコウの「モー」という声や、ヒナの声は?
大人は、牛のような低い声や、高い声を出すことがあります。ヒナは、餌をねだるときに、人のしゃっくりに似た声を出します。
声について書いているのは、鳥類図鑑『Storks, Ibises and Spoonbills of the World』(Hancock ほか、1992年)です。牛のような声、しわがれた声、高い声の3つが挙がっています。
ヒナの声については、同じ図鑑が「人のしゃっくりに不気味なほどよく似ている」と書いています。親が餌を運んでくると、ヒナはこの声でねだります。
ザンビアの研究では、親が巣に餌を運ぶのは1日に平均1.2回でした(Mullers & Amar、2015年)。巣にカメラを置いて記録した結果で、運ぶ時間は朝早くと朝の遅い時間に多くなっていました。
生まれて最初の40日ほどは、親は巣からほとんど離れません。離れるのは、ヒナを冷やす水や巣の材料をとりに行くときくらいでした。ヒナのことはハシビロコウの赤ちゃんで紹介しています。
ここからはコウくんの推測です。巣ではおとな同士がクラッタリングであいさつをして、親が餌を運ぶのは朝に多かった。野生の巣のまわりでくちばしの音がよく響くのも、朝の時間なのかもしれないね。
ハシビロコウとコウノトリの鳴き声は似ている?
くちばしを打ち鳴らすクラッタリングは、コウノトリの仲間とよく似ています。ただ、ハシビロコウはコウノトリの仲間ではありません。
日本のコウノトリについて、国土交通省の資料は次のように説明しています。ヒナのうちは鳴くけれど、巣立ってしばらくすると鳴かなくなる。かわりに、頭を背中につくほどそらしてクラッタリングをする。
ヨーロッパのシュバシコウも、首を上下に動かすディスプレイ(=仲間に見せる決まった動き)でクラッタリングをします。
姿勢には違いがあります。コウノトリは頭を背中のほうへそらしながら鳴らします。ハシビロコウは、首を下げるお辞儀といっしょに鳴らすことが多い鳥です。同じ音でも、見た目はほとんど反対の動きです。
| 項目 | ハシビロコウ | コウノトリ | シュバシコウ |
|---|---|---|---|
| 大人の声 | ほとんど出さない | 巣立ち後は鳴かなくなる | やわらかい声を出すこともある |
| クラッタリング | 巣でのあいさつ・求愛 | 威嚇やコミュニケーション | 首を上下させるディスプレイで |
| ヒナの声 | しゃっくりのような声 | 餌をねだるときに鳴く | 記載を見つけられなかった |
| 分類 | ペリカン目 | コウノトリ目 | コウノトリ目 |
Animal Diversity Web によると、ハシビロコウの鳴管はサギに似ています。一方で、クラッタリングや耳の小さな骨(耳小骨)はコウノトリに似ています。分類がなかなか決まらなかったのは、こうした特徴が入り混じっているためです。
ここからはコウくんの推測です。コウノトリもハシビロコウも、大きくて硬いくちばしを持っている。声をあまり使わない鳥どうしが、それぞれ別の道すじで、くちばしで話す方法にたどり着いたのかもしれないね。
世界の動物園は、ハシビロコウの音をどう紹介している?
世界の動物園も、ハシビロコウを「ふだんは静かで、あいさつにくちばしを鳴らす鳥」と紹介しています。紹介のしかたは、どの園もよく似ています。
| 施設 | 国 | 公式サイトの紹介 |
|---|---|---|
| ZooTampa | アメリカ | ほとんど静か。つがいのあいさつにクラッタリング。大人は「モー」、ヒナはしゃっくりのような声 |
| ダラス・ワールド・アクアリウム | アメリカ | ふだんは静か。クラッタリングは巣でのあいさつに使われるようだ。若い鳥も練習する |
| マンダイ・バード・パラダイス | シンガポール | ふだんは静か。あいさつや巣作りのときに、大きくうつろに響く音を立てる |
| 高知県立のいち動物公園 | 日本 | クラッタリングとお辞儀には親愛の意味がある |
ダラス・ワールド・アクアリウムは、若い鳥のクラッタリングに「練習する(practice)」という言葉を使っています。Animal Diversity Web も、ヒナや若鳥がクラッタリングをすると書いています。若いころの話はハシビロコウの子供で紹介しています。
アメリカの2つの施設は、どちらも出かけられる場所です。ZooTampaのハシビロコウとダラス・ワールド・アクアリウムのハシビロコウで紹介しています。
ハシビロコウの鳴き声は動物園で聞ける?
聞けることがあります。飼育員さんが近くに来たときや、2羽が向き合ったときがチャンスです。
2026年10月時点で、日本の動物園で2羽以上がいる施設は次のとおりです。
| 施設 | 羽数(2026年10月時点) | メモ |
|---|---|---|
| 恩賜上野動物園(東京都) | 4羽 | ミリーとハトゥーウェを繁殖のため非公開の施設へ移す予定(10月26日の予定は延期・日は未定) |
| 神戸どうぶつ王国(兵庫県) | 3羽 | 2025年に若いペアのサカラとクラルが来た |
| 高知県立のいち動物公園(高知県) | 2羽 | 解説シートでクラッタリングとお辞儀を紹介 |
| 千葉市動物公園(千葉県) | 2羽 | 2028年春ごろまで展示を休止 |
上野動物園では、2羽の移動のあと展示場に残るのは、メスのアサンテとサーナの2羽です。移動は10月26日の予定でしたが延期になり、今は4羽とも見られます(2026年10月23日時点)。メスどうしでも、向き合ったときの様子に注目してみてください。
のいち動物公園の紹介では、メスのカシシは、部屋に入ってくる職員みんなにあいさつをするそうです。オスのささも、あいさつの行動を見せると書かれています。
1羽で暮らす施設でも、飼育員さんへのあいさつで音を聞けることがあります。いつも聞けるわけではないので、出かける前に公式情報を確認し、聞けたらラッキーくらいの気持ちで待ちましょう。会える場所はハシビロコウに会える動物園にまとめました。
音を動画で聞きたいときは、ハシビロコウの動画・ドキュメンタリーも参考にしてください。
出典
- Animal Diversity Web(ミシガン大学):Balaeniceps rex
- Animal Diversity Web(ミシガン大学):Ciconia ciconia(シュバシコウ)
- Hancock, Kushlan & Kahl(1992)『Storks, Ibises and Spoonbills of the World』の記述(英語版ウィキペディアの引用で確認)
- マンダイ・バード・パラダイス(シンガポール):Shoebill
- ZooTampa:Shoebill Stork
- ダラス・ワールド・アクアリウム:Shoebill Stork
- 高知県立のいち動物公園:ハシビロコウの解説シート
- 高知県立のいち動物公園:ハシビロコウ
- 国土交通省 関東地方整備局:コウノトリはどんな鳥?
- Dodman(2013):ハシビロコウ国際単一種保全行動計画(AEWA Technical Series No.51)
- Mullers & Amar(2015):巣での親の行動とヒナの成長の研究(Waterbirds 誌)
- FishBase:Protopterus aethiopicus(マーブルドハイギョ)
- 神戸どうぶつ王国:新しいハシビロコウの紹介
- 恩賜上野動物園:ハシビロコウの非公開施設への移動について(2026年)
- 千葉市動物公園:ハシビロコウの展示休止について(2026年)
- 神戸どうぶつ王国:新たなハシビロコウがやってきた(2025年6月・共同通信PRワイヤー)


